『ハリーポッターとアズカバンの囚人』から登場したピーター・ペテュグリュー。
彼はジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、リーマス・ルーピンの旧友であったが、同時に敵陣営と繋がっていた裏切り者でもあった。
そんな彼の正体が暴かれるまで、彼はウィーズリー家のペットのネズミ「スキャバーズ」として生活していた。実に12年間もネズミに変身したまま、魔法界の片隅に潜んでいたのだ。
彼がはなぜウィーズリー家のネズミになったのだろうか。なぜ潜伏先として魔法界の名門一家であるウィーズリー家が選ばれたのだろうか。今回はピーターがウィーズリー家のネズミになった理由を考察していく。
そもそもなぜピーターはネズミの姿で隠れ続けていた?
ピーターがネズミの姿で隠れていたのは、ダンブルドア陣営とヴォルデモート陣営から逃れるためだった。
ダンブルドア陣営から逃げていたのは容易に理解できる。ポッター家の隠れ家の情報をヴォルデモート卿に共有し、彼らを死に追いやった張本人だからである。
一方、ヴォルデモート陣営からも逃げていたのはなぜだろうか?
それは、彼らからも裏切り者だと思われていたからである。
ヴォルデモート卿にポッター家の居場所をピーターは、脅威を排除することに貢献した英雄となるはずだった。しかし、ヴォルデモート卿はポッター家で破滅した。理由も原因も分からない。一方、ピーター・ペテュグリューの情報によってそのような事態が起こった事だけは分かる。つまり、デスイーター側もピーターを裏切り者だと認識していたのだ。
この点についてはシリウスがアズカバンに収監されていた際の情報をもとに、非常に鋭い指摘をしている。
「おまえは十二年もの間、わたしから逃げていたのではない。ヴォルデモートの昔の仲間から逃げ隠れしていたのだ。アズカバンでいろいろ耳にしたぞ、ピーター。……みんなおまえが死んだと思っている。さもなければ、おまえはみんなから落とし前をつけさせられたはずだ……わたしは囚人たちが寝言でいろいろ叫ぶのをずっと聞いてきた。どうやらみんな、裏切り者がまた寝返って自分たちを裏切ったと思っているようだった。(中略)」
『ハリーポッターとアズカバンの囚人』第19章:ヴォルデモート卿の召使い
ピーターはダンブルドア陣営とヴォルデモート陣営の両方から逃れるため、12年間もの間ネズミの姿で潜伏生活をしていたのだった。
ピーターはいつからウィーズリー家のネズミに?
ピーター・ペテュグリューこと「スキャバーズ」はヴォルデモートが失脚した後、かなり早い時期からウィーズリー家に潜んでいたと考えられる。
『ハリーポッターとアズカバンの囚人』でスキャバーズは少なくとも12年間生きていたことが示唆されている。これはポッター家がヴォルデモートに襲撃された時期と一致している。そのため、ピーターがウィーズリー家に潜伏を開始したのは、ピーターがポッター家を裏切ってからかなり早い時期だと考えられる。
ピーターがウィーズリー家に飼われた経緯は?
ネズミに変身したピーターとウィーズリー家の出会いは不明である。
これは原作でも映画でも描かれていない。ただ、ウィーズリー家の家庭環境を考えれば、ウィーズリー家の子どもの誰かが発見し、ペットとして迎え入れたのだと考えられる。
あくまでも考察であるが、ネズミに変身したピーターを発見したのは、長男のビルか次男のチャーリー・ウィーズリーの可能性が考えられる。原作の『ハリーポッターとアズカバンの囚人』では、スキャバーズが何年も兄弟の間で引き継がれていたペットであったことが示唆されている。
そのため、初めは年長のビルもしくはチャーリーがペットとして飼育し、その後、フレッド&ジョージ、パーシー、ロン、という風に引き継がれていったのではないだろうか。
「だって、たぶん、スキャバーズはほかのネズミとけんかしたか何かだよ! こいつは何年も家族の中で〝お下がり〟だった。たしか――」(ロンのセリフ)
「十二年だね、たしか」 ルーピンが言った。
「どうしてそんなに長生きなのか、変だと思ったことはないのかい?」
「僕たち――僕たちが、ちゃんと世話してたんだ!」ロンが答えた
『ハリーポッターとアズカバンの囚人』第19章:ヴォルデモート卿の召使い
なぜウィーズリー家を潜伏先に選んだ?
ピーターがウィーズリー家を潜伏先に選んだ理由は謎である。ウィーズリー家でなければいけない理由があったのか、それとも偶然なのかは原作でも映画でも描かれていない。
一方、ピーターが意図的に魔法使いの家庭に潜伏したことは確かである。
ネズミの姿で行方をくらました後、ピーターは魔法界の情勢が常に分かる場所にいる必要があった。というのも、いつ何時自分を狙って魔法界が動き出すか把握しておくことで、いつでも自分の身を守れる状態にしていたのだ。
このあたりについては、原作の『アズカバンの囚人』でシリウスが的確に指摘している。
「(中略)そもそも魔法使いの家族に入り込んで飼ってもらったのは何のためだ? 情報が聞ける状態にしておきたかったんだろう?え?おまえの昔の保護者が力を取り戻し、またその下に戻っても安全だという事態に備えて……」
『ハリーポッターとアズカバンの囚人』第19章:ヴォルデモート卿の召使い(シリウスのセリフ)
そのため、意図的に魔法使いの家族に飼われ、そこがたまたまウィーズリー家だったと考えるのが妥当だろう。
セドリックかルーナがピーターを飼っていたかもしれない
ピーターがたまたまウィーズリー家に入り込み、運よく飼われたのだとすると、別の可能性も考えられる。それは、セドリック・ディゴリーかルーナ・ラブグッドがピーターを飼育していた可能性だ。
ウィーズリー家の近くには「ディゴリー家」と「ラブグッド家」がある。もしピーターがたまたまたどり着いた家がウィーズリー家でなかった場合や、飼われずに捨てらてしまった場合、ディゴリー家もしくはラブグッド家にたどり着いていた可能性がある。
ラブグッド家は魔法生物や生物を好む夫婦だ。迷い込んだ一匹のネズミを大切に飼うことは十分にあり得ただろう。
またセドリックも生真面目で優しい性格の人物だ。弱ったネズミが家に迷い込んだ場合、懸命に世話をすることは十分に考えられる。
その場合、ピーターが生きている事は一生明らかにならなかったかもしれない。
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